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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)1174号 判決

被告人

金洪謙

外五名

主文

被告人等の本件控訴は何れも之を棄却する。

理由

被告人の自白が強制拷問又は脅迫によるもの、その他任意にされたものでない疑のあるものであるときは之を証拠とすることができないこと及被告人はその自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には有罪とされないことは日本國憲法第三十八條第二、三項及刑事訴訟法第三百十九條第一、二項に明定するところであるが、被告人の任意にされた自白と之を補強する他の証拠とを綜合してその被告人の犯罪事実を認定しうる以上他の補強証拠が、物証であれ人証であれ、將又所論に所謂情況証拠又は推測証拠であろうとを問わず、その被告人を有罪とするに差支なく、そして自己に不利益な唯一の証拠として問題とされる自白とは有罪とされるかどうかの対象となつた被告人自身の自白のことであつて、仮令共犯関係又は共同被告人の関係があつても他の共犯者又は他の共同被告人の自白を包含しないのである。從つて共同被告人の自白は相互に他の被告人の犯罪事実認定の補強証拠となりうるのであつて、所論の如く他の共犯者又は他の共同被告人の自白があつても共同被告人中の一人なる当該被告人の自白がない限り当該被告人を有罪となし得ないという訳のものではない。

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